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「貝谷賞」はNCNPの青木吉嗣先生が受賞

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 患者に心身の苦痛を与える筋生検に代わる新たな検査方法の開発を促進するため、この分野に貢献した研究者個人を顕彰する一般社団法人日本筋ジストロフィー協会の「貝谷賞」受賞者が青木吉嗣先生(国立神経・医療研究センター)に決まり、2023年6月17日の令和5年度第60回全国大会で贈呈式が行われました。

 令和2年1月から令和4年12月末まで3年間にわたって国内外の研究者を対象に募集をした「貝谷賞」の応募が締め切られ、令和5年3月10日に選考委員会が開催されました。

 選考委員会は応募者の2名について選考することとし、最初にプレゼンテーションが30分ずつと質疑応答がありました。その後、応募者には退席してもらった上で受賞に相応しい研究がいずれであるかについて討議しました。

 その際の視点としてはまず、今回の貝谷賞の趣旨は「患者に心身の苦痛を与える現在の筋生検に代わる新たな方法の開発を促進するため、この分野に貢献した研究者個人に対し表彰する」ものであることが選考委員の間で確認されました。

 1つ目の研究はマイクロRNAがDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)のバイオマーカーとして有用であることを示し、モデルマウスを用いてマイクロRNAの細胞外への放出が筋ジストロフィーの病態に関与していることを示す興味深い研究成果であった。また、AI(人工知能)を用いたDMDの治療効果予測プログラムはこれから未知の抗体を検出する上で強力な武器になることを示す貴重な研究であると評価された。ただし、現時点ではまだ筋生検に代わる検査法として実用化するには至っていないと判断されました。

 一方、2つ目の研究の提案者は、新たなエクソン・スキップ薬の開発に取り組んでいる。その過程で従来は患者の繊維芽細胞あるいは筋芽細胞を用いてエクソン・スキップの効果を調べる必要から、侵襲性の高い筋生検を行ってきました。しかし、これを無侵襲で効率的な尿由来細胞を用いた骨格筋細胞アッセイ系により効果判定できる方法を開発し、実際にエクソンスキップ薬の開発に活用した点は患者に多大な負担軽減をもたらすものでした。この研究領域の進展に寄与する成果であると高く評価できるとされました。

 この結果、貝谷賞は、2つ目の研究を提出した青木吉嗣先生(国立神経・医療研究センター)に決まりました。

 

(貝谷賞選考委員、敬称略、五十音順)
石原 傳幸(国立病院機構箱根病院名誉院長)
大澤 真木子(東京女子医科大学名誉教授、日本筋ジストロフィー協会神経・筋疾患医学情報登録・管理機構機構長)
武田 伸一( 国立精神・神経医療研究センター顧問)
戸田 達史(東京大学医学部 神経内科教授)
樋口 輝彦( 国立精神・神経医療研究センター 名誉総長)(委員長)

 

 

(以上、ホームページ運用チーム)

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