第60回全国大会 大会決議文
私たち、日本筋ジストロフィー協会は設立60周年を迎えました。これまで当協会の発展にご尽力頂いた諸先輩方、並びに関係者の皆様に、改めて深く感謝し厚く御礼申し上げます。
筋ジストロフィーの研究が始まってから半世紀以上が経ちました。筋ジストロフィー患者・家族の願いは、一日も早い「根本治療の確立」です。
現在、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、一部の方を対象にエクソンスキッピング薬の利用が始まっています。SMAではすでに3種類の治療薬が利用されています。福山型筋ジストロフィーも、発症の仕組みが解明され、核酸治療薬の治験に多くの期待が寄せられています。筋強直性ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー等でも世界中で様々な治療薬開発が進んでいます。これもひとえに日夜研究に熱意をもって取り組んでくださっている研究班の先生方や関係者の皆様のご尽力の賜物です。感謝申し上げますとともに、根本治療の確立に向けた更なるご研究を、切に、お願いいたします。
さて、4年に及ぶ新型コロナウィルス感染症の世界的な流行は、社会に多くの変化や影響をもたらしました。多くの企業で在宅勤務が行われ、オンラインの新たな仕組みが広く活用されるようになりました。多くの学校や大学がオンライン授業を開始し、自宅や遠隔地からも授業に参加することができるようになりました。新型ウイルスは経済的に大きな影響を与えましたが、このような新しい機器やシステムの開発、生活様式やビジネスモデルの誕生は、外出の難しい神経筋疾患患者にとって、社会参加への追い風となっています。
私たち日本筋ジストロフィー協会も、これまで対面で行ってきた会員総会や全国大会、座談会、訓練指導などをオンラインで実施することで、全国の仲間たちと、画面を通じて会うことができるようになりました。これからも、絶えず変化する社会のなかで、これまで先輩たちが築いてきた理念を踏襲しながらも、その時勢に合わせた持続可能な活動のあり方を模索していく必要があります。
取り組むべき課題は山積しています。
入所患者には症状の進行した方も多く、きめこまやかな支援が求められます。生活環境や異性介助の問題などの支援の質を向上させるために声を上げていかなければなりません。病床削減や病棟の人員不足問題は喫緊の課題です。余暇活動・就労など、現状と、多様化したニーズに合わせた対応も求められます。
在宅患者では、ヘルパー不足、事業所不足のために、福祉サービスを十分に利用できない事象が起きています。地域で安心して暮らすため、地域格差の解消、福祉の担い手の確保も急務です。
ICT機器の利用は神経筋疾患患者の社会参加を促進しますが、利用可能な視線等入力装置、オーダーメイドのマウス等が必要となり、経済的負担が大きくなりがちです。これには日常生活用具給付事業の利用金額の増額や、利用範囲の幅を広げるといった制度面からの対応が考えられます。
以上に掲げたような様々な課題解決のためには、私たち協会会員一人ひとりが知恵を出し合い、力を合わせ、関係機関との連携を図り、協会が先頭に立って提言していくことが必要不可欠です。
これからも患者・家族、関係者が一丸となって協会活動を推進していきたいと思います。
第60回全国大会開催にあたり、日本筋ジストロフィー協会は、次のことが実現するよう活動を強化し、要望することを決議いたします。
1.根本的治療法の開発に向けた治験・研究の予算増強、研究機関の充実・強化、最新医療への保険適用。
2.障害者総合支援法や障害者差別解消法など神経・筋疾患患者に関わる法律の適正な実施。
3.入院患者のQOL向上(病院スタッフの人員不足解消、多様なニーズの実現)。
4.在宅患者のQOL向上(福祉サービスの地域格差の是正、ICT機器活用の環境の更なる促進)。
5.神経・筋疾患患者の就労施策の強化と推進。
6.災害対策の強化(神経・筋疾患患者が利用可能な避難所整備や人工呼吸器利用者への支援強化)。
令和5年6月17日
第60回全国大会 患者代表 村上英樹
(以上、ホームページ運用チーム)