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第59回全国大会 大会決議文

  • JMDA

令和4年 第59回全国大会 決議文

 

 私たち、日本筋ジストロフィー協会が設立され58年が経過しました。設立当初からの筋ジストロフィー患者・家族の願いは、一日も早い「根本治療の確立」です。この「根本治療の確立」は協会活動の柱ともなっています。

 筋ジストロフィーの研究が始まってから半世紀以上経ちました。2020年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬「ビルトラルセン」が発売されるなど、研究の成果を実感しています。また、デュシェンヌ型に限らず世界中で様々な治療薬開発が進んでおり、新たな治療薬の登場も大いに期待できます。これもひとえに日夜研究に熱意をもって取り組んでくださっている研究班の先生方や関係者の皆様のご尽力の賜物です。心より感謝申し上げますとともに、根本治療の確立に向けて今後とも更なる研究を切にお願いいたします。

 さて、近年協会では会員の高齢化や重症化、会員数の減少等の理由で活動が停止する支部が出ています。活動を停止した支部に所属する会員の支援、支部運営の支援が必要となってきています。今後は、地域や活動規模に応じた持続可能な活動の在り方を模索していかねばなりません。

 協会のもう1つの活動の柱である「QOLの向上」については、病気の正しい理解や病気の進行・ライフスタイルに応じた福祉機器の選択や福祉制度の利用等が必要になってきますが、患者とその家族の力だけでは難しい事もあります。医師やケースワーカー、行政等からの適切な支援が必要です。適切な支援に結び付けるために、私たち日本筋ジストロフィー協会が、QOLの向上に役立つ情報提供と助言をし続けることが大切です。

 昨年には筋ジストロフィー患者の療養介護についての調査結果がメディアに取り上げられ、SNS上で大きな反響を呼びました。この調査結果は入院患者による「QOLの向上」を求める強いメッセージと受け止め、病棟を住みよい療養環境となるよう働きかけ続けることが必要です。

 在宅患者に目を向けてみると、福祉サービスの利用に地域格差が見られます。訪問介護では、ヘルパー不足、事業所不足のために、制度があるのにもかかわらず自分の住む地域では十分に利用できないといったことも起きています。地域で安心して暮らせるように、引き続き働きかけていく必要があります。

 私は現在、通信制の大学で学んでいますが、進路選択に多くの制限がありました。全日制では、大学生活にかかわる支援を受けられる大学がごく一部に限られています。また通信制の場合、学部・学科の選択肢が少なく、学生同士の交流の機会も限られています。そのような現状から、進路の選択肢を増やす必要性を実感しました。また、小中高の教育について、支援学校に留まらず普通学校で学ぶための環境整備も重要な課題となっています。普通学校で筋ジス患者が学ぶためには、体調や症状に応じて柔軟にカリキュラムを変更できる体制づくりが必要です。筋ジス患者が支援学校だけでなく普通学校でも学べるよう小中高の教育体制を改善すると同時に、大学進学の選択肢を増やすための議論や働きかけが必要です。

 これらの課題解決は一人の力では困難ですが、一人ひとりが知恵を出し合い、力を合わせることで解決の一助となるはずです。これからも患者・家族、関係者が一丸となって協会活動を推進していきます。

第59回全国大会開催にあたり、日本筋ジストロフィー協会は、次のことが実現するよう活動を強化し、要望することを決議いたします。

1. 根本的治療法の開発に向けた治験・研究の予算増強、研究機関の充実・強化、最新医療への保険適用。
2. 障害者総合支援法や障害者差別解消法など筋ジス患者に関わる法律の適正な実施。
3. 入院患者のQOL向上(病院スタッフの人員不足解消と教育の実施、通信環境の改善)。
4. 在宅患者のQOL向上(福祉サービスの地域格差の是正、居宅介護や重度訪問介護の適正な支給時間の確保、訪問看護師・ホームヘルパー等の人員不足解消)。
5. 筋ジス患者への就学(義務教育、高等教育及び大学教育)・就労施策の強化と推進。
6. 災害対策の強化(筋ジス患者が利用できる福祉避難所の整備や人工呼吸器利用者への支援強化)。

令和4年6月25日

第59回全国大会 患者代表 小野寺 優

 

 

(以上、ホームページ運用チーム)