ここから本文です。

令和5年度予算要望書を文科省へ提出

  • JMDA

筋ジス協会は、下にある「令和5年度文部科学省予算編成に関する要望書」を文部科学省へ提出しました。

 

令和4年6月27日

令和5年度文部科学省予算編成に関する要望書

一般社団法人日本筋ジストロフィー協会
代表理事 竹田保

 新型コロナウイルス感染症への対応も長きに渡っています。そのような中でも学校職員や文部科学省職員の方々が職務を全うされていることに感謝申し上げます。当会としては、コロナ禍及びその後の社会において、筋ジストロフィー患者が十分な教育を受けられるよう、下記のとおり要望いたします。また、会員からの聞き取りで生徒に対する差別や教職員からの虐待とも言える発言がありました。全ての要望に先立ちこれらの間題が起きないように学校関係者に再発防止の徹底をお願いいたします。

1.学校教育における差別や虐待の防止
(1)心のバリアフリーに関する教育の強化
 筋ジストロフィーのように幼児期に発症することが多い疾患では、小・中・高等学校において、障害を理由に教職員から暴言、体罰や児童生徒からいじめを受ける事例が後を絶たない。すべての児童生徒に対しては、社会モデルの考え方や心のバリアフリーに関する教育を強化していただくとともに、教員や学校関係者に対しては、筋ジストロフィーの児童生徒が適切な教育・指導を受けられるよう、教員養成課程の見直しや研修等の強化をしていただきたい。
(2)専門職員の配置と教育
①学校職員・介護員
 学校職員や介護員が不足しており、身体障害のある筋ジストロフィーの児童生徒が十分な教育を受けられない事例が未だにあるため、必要な学校職員や介護員を配置できるよう予算措置の強化をお願いしたい。
②特別支援教育の知見やノウハウの共有
 小・中・高等学校に通う筋ジストロフィーの児童生徒が、それぞれの障害の状況に応じた十分な教育を受けられるよう、特別支援学校・学級で蓄積されている知見やノウハウを小・中・高等学校に共有し、活用していただきたい。
(3)バリアフリー設備・環境の整備
 学校施設は災害時に障害のある高齢者等の避難所にもなるため、在籍する児童生徒のためだけでなく、高齢者等も安心して避難できるようなユニバーサルな避難所として、学校施設に大型の電動車椅子も使用可能な障害者用トイレやエレベーター及び人工呼吸器等のための非常用電源(バッテリー電源)を設置するなど、バリアフリー設備・環境を整備できるよう予算措置の強化をお願いしたい。

2.児童・生徒の状況に適した就学先の選択
 筋ジストロフィーは、様々な病型があり、症状の出方や進行に個人差が大きい疾患であるため、環境設備や人員配置の面で制限を受けることなく、筋ジストロフィーの児童生徒それぞれの希望や状況に応じた就学先を選択できるように十分な予算措置をお願いしたい。また、学区外のバリアフリー化が進んでいる学校への通学が認められない、旧国立療養所に隣接する特別支援学校への就学要件に入所が規定されているなど、未だに本人が望まない就学などを強いられています。あらためて教育委員会や学校関係者へ障害者差別解消法や障害者権利条約等に基づく対応を徹底するよう周知いただくとともに、本人が望む就学先を選択できるよう取り組んでいただきたい。

3.特別支援教育における対応
(1)医療的ケア児支援法の遵守
 重度の筋ジストロフィーの児童生徒は、排痰・嚥下機能が早くから低下し、日常的に呼吸管理や喀痰吸引等の医療的ケアが必須である。医療的ケア児支援法の趣旨に則って、保護者の付き添いがなくても、医療的ケア児が「全国どこでも」「安心して」教育を受けられるよう、必要な看護師等や介護福祉等その他の医療的ケアを行える者を十分に配置いただきたい。
(2)ICT環器を利用した教育の推進
①教材の研究と展開
 コロナ禍において、ICTを利用したオンライン学習が推進されているが、肢体不自由のある筋ジストロフィーの児童生徒やその教員にも、わかりやすく使いやすいオンライン教材の研究開発とその全国展開を行っていただきたい。また、デジタル教科書や教材については肢体不自由のある筋ジストロフィーの児童生徒も使いやすい配慮をお願いしたい。
②ICT機器の活用
 筋ジストロフィーの児童生徒一人ひとりの身体の残存機能を最大限に活用できるよう、パソコン、タプレット端末、音声入力や視線入カシステム等の様々なICT機器を症状の進行を見越して導入していただきたい。
(3)交流及び共同学習等の強化
 少人数の特別支援学校・学級は、コロナ禍で特に閉鎖的になっているため、普通学校・学級との交流及び共同学習や、学校の枠を超えた地域との交流の機会を増やし、筋ジストロフィーの児童生徒の社会性の醸成と社会進出に努めていただきたい。
(4)緊急時の対応強化
 学校内だけでなく、スクールバス内や校外学習等における緊急時の対応強化をお願いしたい。命を守ることを最優先とするよう、人員の配置、マニュアルの整備・内容の再確認、関係者への教育徹底、及び対応訓練の実施をお願いしたい。

4.高等教育における対応
(1)学内での支援体制の整備
 大学等の高等教育機関において、筋ジストロフィーの学生が修学できるよう、障害者差別解消法に規定される合理的配慮の義務を各大学等に徹底するよう周知いただくとともに、授業や課外授業・活動だけでなく、授業を受ける上で必須である通学や学内での食事やトイレ等の介助についても教育に関する事項として位置づけ、支援体制や環境整備の強化をお願いしたい。
(2)医療的ケア児支援法の高等教育等への適用
 医療的ケア児支援法は高等学校等までに在籍する医療的ケア児を対象としているが、大学や専門学校等の高等教育機関や職業訓練校等の学生などにも同法を適用していただきたい。
(3)コロナ禍後を見据えた支援者の育成
 大学等においては、筋ジストロフィー等の障害のある学生を支援するための人材・ボランティア等の養成を長年継続していたところもあるが、コロナ禍の中断により人材が失われている。これらの大事な社会的資源が衰退しないように働きかけをお願いしたい。
(4)重度障害者の修学に積極的な大学等へのインセンティブ創設
 教職員のエ夫や独自の予算措置により、筋ジストロフィー等の重度障害のある学生の修学を支援している大学等が複数あるが、こうした取り組みにインセンティブを設けることで、さらなる支援体制の拡充や、他の大学等への取り組みの展開に繋げていただきたい。

5.通学手段の整備と支援
 誰もが学校に通学できるために、小・中・高等学校や特別支援学校のスクールバス整備にについて教育委員会や学校を指導いただきたい。また、厚生労働省とも協議の上、介護員の通年かつ通期の通学支援を実現していただきたい。

6.生涯学習機会の確保・整備
 筋ジストロフィー患者が心身ともに健康に生きていくためには、生涯にわたり学び続けることが重要であるが、特別支援学校等の卒業とともに学びの機会が断たれる現状がある。卒業後は、学校で身に付けた能力を維持・伸長できるよう、生涯学習の機会を十分に確保できる環境整備をお願いしたい。また、肢体不自由や寝たきりの筋ジストロフィー患者が、読書やパソコンを用 いた学習活動を行う際には、ICT機器の使用が必須であるため、就学期間中にICT機器操作を習得するための支援強化をお願いしたい。

以上

 

 

(以上、ホームページ運用チーム)