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令和5年度予算要望書を厚労省へ提出

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筋ジス協会は、下にある「令和5年度厚生労働省予算編成に関する要望書」を厚生労働省へ提出しました。

令和4年6月27日

令和5年度厚生労働省予算編成に関する要望書

一般社団法人日本筋ジストロフィー協会
代表理事 竹田保

 

 医療技術の進歩に伴い進行性の神経・筋疾患患者の生命予後が改善し、介護度の高い患者、医療依存度の高い患者が飛躍的に増加しています。本要望書は入所者・在宅患者両面の生活支援から治療研究まで多岐にわたるものですが、特に、入所者の人権を守る要望および、医療依存度の高い在宅患者の支援については、緊急性の高いものとして強くお伝えしたく、予算編成上のご配慮を、何卒なにとぞよろしくお願い申し上げます。

1.入所者のQOL向上
(1)療養介護病棟への人員の増配
 療養介護病棟へ入所者の人員の増配を喫緊の課題としてお願いしたい。 感染症対策のための面会禁止、外出・外泊禁止が長期に及んでおり、病棟はこれまで以上に人手不足が深刻化し、入所者、職員ともに大きなストレスがかかる状況下にある。当会としては、入所者がQOLの改善を求めるのも気が引け、職員も入所者に寄り添えない状況と認識している。このような状態が長期間続くと虐待を生む可能性があるため、現場をご視察し実態把握の上、人員の増配を図るなど早急な改善をお願いしたい。
(2)面会機会の確保
 新型コロナウイルス感染症による混乱から2年以上経過し、感染防止の観点から面会も禁止されているため、2年以上我が子に触れられない親もいる。現場の方のご努力、貴省の通知も承知しているおりますが、直接面会できる機会の確保にご尽力いただきたい。
(3)ICT機器を活用できる人員の配置
 コロナ禍で家族との面会を含め外部の人とのコミュニケ―ションの機会が完全に断たれ、精神疾患になる者もいる。各療養介護病棟ともICT環境は整っているものの、指先などが辛うじて動く筋ジストロフィー患者は、介助なしで機器の操作ができない。これを踏まえ、ICT機器の活用ができる指導員や保育士等の人員を増やしていただきたい。

2.患者・家族のQOL向上
(1)医療的ケアを必要とする重度な在宅患者への支援の拡充
① 医療的ケアに必要な福祉サービスの拡充
 筋ジストロフィー患者は病状の進行により医療的ケアが必要となるケースが多数存在し、その医療的ケアが必要な利用者を受け入れる事業所が大幅に不足している。医療的ケアの必要な重度障害者と家族が安心して生活できるように、生活介護で必要な支援体制を構築できるよう福祉制度の創設及び適切な報酬設定、重度障害者を支援する介護職員や看護師を確保するための施策の実施を強く求める。また、介護職員による喀痰吸引等を実施するための研修(第三号研修等)の実態に沿った改善もお願いしたい。
② 医療的ケアに必要な物品の支援
 医療的ケアが必要な筋ジストロフィー患者には様々な経済金銭的な負担が発生している。吸引カテーテルなど医療的ケアに必要な物品の保険適応をお願いしたい。
(2)福祉人材の確保
 障害者福祉を担う事業所の人材不足は極めて深刻で、認められた支援量を利用できないことも多い。また、ヘルパーの高齢化も深刻である。福祉人材の育成、人材確保のためのあらゆる手段を講じるようお願いしたい。
(3)障害者総合支援法等の適正な実施
① 地域格差の是正(福祉サービス)
 障害福祉サービスには人が生活する上で不可欠なものが多い。障害者が住んでいる地域によりサービス支給量、実施される事業、内容の違いによる格差があるのは著しい不平等である。是正を強くお願いしたい。
② 居宅系サービスの適用拡大
 地域でヘルパーによる支援が必須で生活する患者が増えている。就学、就労、入院など各ライフステージの変化にあわせた支援が受けられるよう、引き続き従来の制度の充実と適用拡大をお願いしたい。また、重度訪問介護による見守りが児童に認められないなど、女性の社会参加を促す国の基本方針とも相反する実態もある。 こちらについても早急な改善をお願いしたい。
③ 在宅就労者への支援
 症状が進行し、通勤が困難となった後も就労を希望する患者が多数いる。現状の就労支援の強化や必要なICT機器の購入等を支援する制度の創設をお願いしたい。
④ 障害児家庭の自己負担軽減  障害児のいる家庭においては自己負担の算定基準の基となる世帯収入に保護者の収入が含まれるため、保護者に重い自己負担が発生している。更に、自己負担額の設定が三段階だけになっているため、ある収入以上は高額負担となっている。自己負担額がより段階的でなきめ細かい設定になるように改善をお願いしたい。
⑤ 福祉用具等のレンタル
 患者の体に合った適切な福祉用具等の使用は、症状の増悪を防ぎ、介護時の事故防止の観点からも必要不可欠である。一方、筋ジストロフィーは病状の進行が早く、生活環境が急に変化するため、現状の給付(購入補助)制度のみでは対応できないケースが多い。そのため、やむを得ず体に合わない福祉用具での生活を送り、病状が進行してしまうことが多数見られる。このようなケースに対応するために、福祉用具等のレンタル給付を認めていただきたい。
⑥ 家族介護支援
 ヘルパーを確保できず、やむを得ず家族の介助で生活が成り立っている患者が多数いる。有償ヘルパーとして家族の雇用を認める等、配偶者を含めた家族介護への支援制度の創設をお願いしたい。
(4)余暇活動支援の充実
 コロナ禍により余暇活動の機会が著しく制限されてきた。withコロナの時代において、障害者権利条約に規定されているように、障害の有無にかかわらず、余暇活動支援の充実をお願いしたい。

3.地方公共団体等関係機関との連携による施策の実効性の確保
(1)大学への修学支援について
 重度訪問介護利用者の大学修学支援事業など 厚生労働省において必要と認められた事業について十分に実施されていない現状がある。地方公共団体や文部科学省とも連携の上、その施策の実現を図っていただきたい。また、医療的ケア児支援法の対象を、高等教育機関に在籍する者にも拡大していただきたい。
(2)就労対策の充実
 障害者差別解消法改正法が成立し、民間事業者への合理的配慮が義務化されたが、現状として、事業所内の障害者トイレ設置等のバリアフリー化に消極的な事業所もある。障害者差別解消法改正法をできるだけ早く施行いただくとともに、バリアフリー化を推進及び利用可能な補助制度を活用するよう周知いただきたい。

4.治療・研究開発の促進
(1)治験と研究費の予算増額、支援強化
① 患者に負担の少ないアウトカムメジャーの開発
 現在の治験プロトコルには、過度な歩行を伴う評価など、患者にとって苦痛を伴うものが多く含まれる。ウエアラブルで24時間、心電図や歩行距離を始めとする筋ジストロフィーに関係する10以上のアウトカムメジャーの研究を進めていただきたい。
② 民間企業への支援
 採算が重要視される製薬会社等の民間企業が希少疾患の創薬に積極的に取り組めるよう、希少疾患の創薬支援制度のさらなる充実をお願いしたい。
③ 希少疾患の研究助成の拡大
 神経筋疾患には様々な病型があるため、現在、十分に研究が行われていない病型にも研究費の助成を拡大していただきたい。
(2)研究機関の充実、強化
 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所をはじめとする研究機関への予算措置の強化をお願いしたい。
(3)遺伝子検査の保険適応
① 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
 外国で顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの臨床試験が開始された。今後、日本でも臨床試験が行われることが想定されるため、その確定診断のための遺伝子検査の早期保険適用をお願いしたい。
② 全塩基配列解析
 筋ジストロフィーの遺伝子変異箇所は多岐にわたり、確定診断のために全塩基配列解析が必要な患者も多いため、保険適用をお願いしたい。
(4)最新の医療技術の全国への普及
 リハビリテーションへのHALの導入など関係者の努力により新しく効果が認められる医療技術が開発されてきたため、これらが全国の医療機関に普及するように予算措置も含めた必要な施策の導入をお願いしたい。 (5) 治療薬や最新医療への保険適応
① 最新治療薬の保険適用
 筋ジストロフィーの治療に対し治験段階まで進んでいる候補薬も多数出てきており、これらの中には高額な薬剤もあるが、患者の治療のためにも認可後、速やかに保険適用をお願いしたい。
② 補助人工心臓の保険適用拡大
 近年、筋ジストロフィー患者および女性変異保有者に対してはリハビリテーションや呼吸管理(人工呼吸器を含む)の進歩により生命予後とADLの改善が見られる。一方、心筋障害は、これを併発した場合は従来の心筋保護薬による治療に限られ、患者の生命予後を規定する重要な因子になっている。また、エクソン・スキップ治療などの新しい治療の導入が進んでいるが、心筋への効果が確立されていないために今後の研究開発を待つ必要がある。
 そこで、従来の治療では効果が期待できない心筋障害を持つ筋ジストロフィー患者および女性変異保有者に対して、補助人工心臓の保険適用の早期実現をお願いしたい。

5.災害時の対応
 停電時に人工呼吸器利用者の生命を保護するため発電機・バッテリーなどの補助と、関係機関を包括した連絡体制、受入れ先の整備をお願いしたい。

以上

 

 

(以上、ホームページ運用チーム)