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第58回全国大会 大会決議文

  • JMDA

2021年度第58回全国大会 大会決議文

 

私たち、日本筋ジストロフィー協会が設立されて57年が経過しました。一日も早い「根本治療の確立」は設立当初から筋ジストロフィー患者、家族の最大の願いです。
筋ジストロフィーの研究は半世紀以上にもわたり、その間に生み出されたiPSをはじめとする新技術と共に、複数の研究が進んでいます。日本で初めての治療薬「ビルトラルセン」が昨年発売されたことや、いくつかの次なる治療薬の進捗情報も我々の大きな希望の光です。これもひとえに日夜研究に熱意をもって取り組んでくださっている研究班の先生方や関係各位のご尽力の賜物です。感謝の意をお伝えするとともに、根本治療の確立に向けて今後とも更なる研究を切にお願いいたします。

さて、2020年から継続する新型コロナウィルス感染症の拡大により、未だかつてない大変革が社会で起こっています。外出制限はデジタルトランスフォーメーションを加速させ、医療体制や薬事承認は社会課題として浮彫となりました。前例のない課題への解を行政も個人も模索し、その中で日々痛感することは「顕在化された課題が社会を動かす」ということです。

筋ジストロフィー患者と家族が抱える課題は常に変化し、地域・ライフステージ・ライフスタイルによっても異なります。そこには個人では乗り越えられない社会・制度の壁が確かに存在します。筋ジストロフィーが希少疾患であるからこそ、個の課題の集約と発信が社会を動かすためにはとても重要です。

入所患者では、人員不足による患者のケアが十分ではなくなり、病院間の格差や、更なるQOL低下が危惧されています。在宅患者では患者家族の高齢化と介護・看護の支給時間の不足などの問題も起こっています。

ICT機器の発達によりコミュニケーションが図りやすくなった今、会員同士の連携を強化する良い機会です。しかしながら、気管切開している患者が、わずかに発声が可能であることを理由に、視線入力などの意思伝達装置が給付対象にないなどの制度上の課題は残されています。ICT機器を自費で購入しなくてはならず、経済的な負担が大きく、社会活動に不自由を強いられる場面があります。GIGAスクール構想の実現が目前に迫る中で、筋ジストロフィー患者が被る不利益は大きなものになると危惧しております。

ICT機器活用における課題をはじめとする、多くの課題解決を図るためにも国を含む関係機関への要望、筋ジス研究への様々な協力、協会組織内の充実と体制強化、本部・支部・病型別分科会の事業推進など、根本治療の確立とQOL向上のために、これからも患者・家族と関係者が一丸となって、協会の運動を推進していきましょう。

第58回全国大会開催にあたり、本協会として次のことが実現するよう活動を強化し、要望することを決議いたします。

 

1.根本治療法の開発に向けた治験・研究費の予算増強、研究機関の充実・強化、遺伝子検査や医療役、最新医療への保険適用。

2.障害者総合支援法等の適正な実施。
・地域格差の是正
・居宅系サービスの適用拡大
・在宅就労者への支援
・障害児家庭への自己負担の軽減
・福士用具等のレンタルなど

3.筋ジス入所患者の療養生活改善に向けた医師・看護師・介護職員・保育士・指導員の質量の増強と通信ネットワークの最大利活用。

4.在宅患者に対する居宅介護や重度訪問介護の適切な支給時間の確保。訪問看護師・ホームヘルパーの人員不足解消のための施策。

5.災害対策の強化(人工呼吸器利用者の生命保護に向けた連絡網や病院備蓄燃料の強化、感染防止対策)。

6.各省庁、地方自治体関係機関との連携による筋ジス患者への就学(普通学校、特別支援学校及び高等教育現場)・就労施策の強化と推進。

 

令和3年6月27日
一般社団法人日本筋ジストロフィー協会
第58回全国大会
患者代表 梶山 紘平