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令和4年度予算要望を文科省へ提出

  • JMDA

筋ジス協会は、下にある「令和4年度文部科学省予算編成に関する要望書」を厚生労働省へ提出しました。

 

令和3年6月21日

令和4年度 文部科学省予算編成に関する要望書

一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会
代表理事 貝谷 久宣

 

 昨年から新型コロナウイルス感染症が流行する中で、筋ジストロフィー等の難病患者及びその家族は、特に不自由な生活を強いられています。それを改善するため、学校職員や文部科学省職員も大変な状況下で、職務を全うされていることに感謝申し上げます。当会としては、コロナ禍及びその後の社会において、筋ジストロフィー患者が十分な教育を受けられるよう、下記のとおり要望いたします。

 

1.児童生徒の状況に適した就学先の選択
 筋ジストロフィーは、様々な病型があり、症状の出方や進行に個人差が大きい疾患である。設備や人員の面で制限を受けることなく、筋ジストロフィーの児童生徒の状況に適した就学先を選択できるようにしていただきたい。学区外のバリアフリー化が進んでいる学校への通学が認められなかったことなどは、障害者差別解消法に規定される合理的配慮の義務に違反しており、教育委員会に法令とその考え方を周知いただくとともに、設備や人員を充実するための十分な予算措置をお願いしたい。

2.普通学校就学者への対応
1) 心のバリアフリーに関する教育の強化
筋ジストロフィーのように幼児期に発症する疾患では、障害を理由にいじめを受ける事例が後を絶たない。他の児童生徒及び担当教諭、学校関係者に対して、障害の社会モデルに対応した心のバリアフリーに関する教育の強化をお願いしたい。
2) 専門職員の配置と質の向上
(1) 学校職員・介護員
身体障害のある筋ジストロフィーの児童生徒が安心して十分な教育を受けられるよう、必要な学校職員・介護員の配置をお願いしたい。
(2) 特別支援学校の知見やノウハウの共有
普通学校・学級に通う筋ジストロフィーの児童生徒が十分な教育を受けられるよう、特別支援学校・学級で得られる知見やノウハウを普通学校・学級に共有し、活用していただきたい。
3) バリアフリー設備・環境の整備
就学する児童生徒のためだけでなく、高齢者との連携を進める学校施設の整備、及び災害時や非常時に避難所となる学校施設の防災機能として、大型の電動車椅子も使用できる障害者用トイレやエレベーターの設置など、ユニバーサルな環境の整備をお願いしたい。

3.特別支援学校・学級就学者への対応
1) 医療的ケア児支援法の完全な実施
重度の筋ジストロフィーの児童生徒は、排痰・嚥下機能が早くから低下し、日常的に呼吸管理や喀痰吸引等の医療的ケアが必要である。第204回国会で成立した医療的ケア児支援法の趣旨に則って、保護者の付き添いがなくても、医療的ケア児が「全国どこでも」「安心して」教育を受けられるよう、必要な看護師等や介護福祉士等その他の医療的ケアを行える者を配置いただきたい。
2) ICT機器を利用した教育の推進
(1) 教材の研究と展開
コロナ禍において、ICTを利用したリモート学習が推進されているが、筋ジストロフィーの児童生徒にもその教師にも、わかりやすく使いやすい教材の研究開発とその全国展開を行っていただきたい。
(2) ICT機器の活用
筋ジストロフィーの児童生徒一人ひとりの身体の残存機能を最大限に活用できるよう、PC、タブレット端末、音声入力や視線入力システム等、様々なICT機器を症状の進行を見越して導入していただけるようお願いしたい。
3) 交流及び共同学習等の強化
少人数の特別支援学校・学級は、コロナ禍で特に閉鎖的になっているため、普通学校・学級との交流及び共同学習や、学校の枠を超えた地域との交流の機会を増やし、筋ジストロフィーの児童生徒の社会性の醸成と社会進出に努めていただきたい。
4) 緊急時対応の強化
学校内だけでなく、スクールバス内や校外学習等における緊急時対応の強化をお願いしたい。命を守ることを最優先とするよう、人員の配置、マニュアルの整備・内容の再確認、関係者への教育徹底、及び対応訓練の実施をお願いしたい。

4.高等教育への対応
1) 学内での支援体制の整備
高等教育機関において、筋ジストロフィーの学生が就学できるよう、障害者差別解消法に規定される合理的配慮の義務を各大学等に周知し、授業(ノートをとる等)や生活(学内での食事・トイレ等)についての支援体制の整備をお願いしたい。在学中の生活介護サービスの活用については、厚生労働省と協議、連携していただきたい。
2) 医療的ケア児支援法の高等教育等への適用
医療的ケア児支援法は高等学校等までに在籍する医療的ケア児を対象としているが、大学や専門学校、職業訓練校などにも同法が適用されるよう努めていただくとともに、関係省庁とも連携し必要な措置を講じていただきたい。
3) コロナ終息後を見据えた支援者の育成
大学等においては、障害のある学生を支援するための人材・ボランティア等の養成を長年継続していたところもあるが、コロナ禍のリモートの活用の中で失われようとしている。これらの大事な社会的資源が衰退しないように働きかけをお願いしたい。
4) 障害者の就学に積極的な学校へのインセンティブ創設
現在、教職員の工夫や独自の予算措置により、障害のある学生の就学を支援している大学等が複数ある。こうした取り組みにインセンティブを設けることで、さらなる支援体制の拡充や、他の大学等への取り組みの展開に繋げていただきたい。

5.通学手段の整備と支援
誰もが学校に通学できるために、普通学校や特別支援学校のスクールバス整備、保護者送迎時の経費助成、普通学校における生活介護サービスの利用等必要な措置等を講ずるよう、地方公共団体や学校に対して指導いただくとともに、これらについて厚生労働省等と協議、連携しながら実施していただきたい。

6.生涯学習と余暇活動の機会の確保・整備
1) 生涯学習の機会の確保
筋ジストロフィー患者が心身ともに健康に生きていくためには、生涯にわたり学び続けることが重要であるが、特別支援学校卒業とともに学びの機会が断たれる現状がある。学校卒業後は、生涯学習の機会を十分に確保できるよう環境整備をお願いしたい。また、上肢障害のある筋ジストロフィー患者が、読書や、パソコンを用いた学習活動を行う際には、ICT機器の使用が必須である。そのため、就学期間中にICT機器操作を習得するための支援強化と、学校卒業後の通所施設へのICT機器利用助成等をお願いしたい。
2) 余暇活動の整備
コロナ禍の自粛生活により、余暇活動の機会が著しく制限されている。障害者権利条約に規定されているように、コロナ禍においても、障害の有無にかかわらず、余暇活動ができる環境を整備していただきたい。

 

以上

 

(以上、ホームページ運用チーム)