倫理審査承認のお知らせ
筋ジス協会が進める研究計画「長時間測定可能なウェアラブル機器を用いた筋疾患患者の身体活動量・心機能・自律神経機能の評価に関するパイロット研究」が、筋ジス協会の倫理委員会で承認されました。この研究は「臨床治験研究促進機構」を令和元年5月の第56回総会で設立し、患者本位の臨床治験研究の推進に取り組む協会活動の一環です。
一般社団法人日本筋ジストロフィー協会「協会賞」募集要項【PDF:230KB】
研 究 計 画 書
2020年9月23日提出
一般社団法人日本筋ジストロフィー協会
倫理委員会委員長 殿
所 属: 日本筋ジストロフィー協会
申 請 者 職 名:代表理事
氏 名:貝谷 久宣
1 研究の名称 長時間測定可能なウェアラブル機器を用いた筋疾患患者の身体活動量・心機能・自律神経機能の評価に関するパイロット研究
2 研究の実施体制(研究機関の名称及び研究者等の氏名、役割を含む。)
代表者氏名 所属・役職 研究における役割
中村昭則 NHOまつもと医療センター臨床研究部長 研究の統括、データの収集・解析・検討
共同担当者
松村 剛 NHO大阪刀根山医療センター臨床研究部長 データの収集・解析・検討
久留 聡 NHO鈴鹿病院病院長 データの収集・解析・検討
竹島泰弘 兵庫医科大学小児科教授 データの収集・解析・検討
貝谷久宣 日本筋ジストロフィー協会代表理事 解析結果の評価・提言
野々村英典 武田薬品工業株式会社日本開発センター 評価指標の検討・解析・シニアクリニカルサイエンスディレクター 結果の評価・検討
3 研究の目的及び意義
目的:本研究はウェアラブル機器である多機能ワイヤレスホルタ記録器(CarPodR、㈱MEDILINK)を用いて、筋疾患の中でもデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)の患者の身体の活動情報(活動量、歩数、姿勢など)、心臓の機能(心電データ)、自律神経の機能(心拍変動解析・身体表面温度)を長時間連続測定する。自然歴や治療介入時期に役立つ情報の取得や、治療薬・治験薬の効果判定に応用できるか、安全性が担保されるかについて検証することを目的とする。
意義:筋疾患患者の運動機能の評価は、外来受診時などの定点的に行われているが、日常生活における身体活動量の評価も必要であるとの指摘が多い。また、心機能障害のひとつである不整脈については、外来受診時の心電図検査や24時間ホルタ心電計が実施されているが、異常が検出されないことも少なくない。近年、携帯デバイスの開発が進み、様々な生体情報の取得が可能となってことから臨床応用が進められている。そこで、筋疾患患者の日常生活における生体情報の把握が同時にできれば、治療・リハビリテーションの介入、治験薬の開発に必要な情報が得られることが期待される。
4 研究の方法及び期間
研究の期間:倫理審査委員会承認日~2022年3月31日
研究の種類・デザイン:侵襲を伴わない介入研究、多施設共同研究
予定する研究対象者数:10名(各施設当たり2~3名)
研究のアウトライン
歩行可能な小児~成人の筋疾患患者(計10名)を対象に、CarPodRを装着して、3軸加速度データ、心電データ、および表面温度データを計測する。患者1名あたり3日間の連続計測(1クール)し、2クールを実施する。計測を行う期間は、夏休み等の長期休暇でも可とするが、同様の生活が送れる期間で曜日を揃えて、2週間程度の間に2クールを実施する。2回目の電極装着は前の装着部をマーキングしておいて家族に装着してもらう。なお、対象者には測定期間における行動記録(別途用意)をつけてもらう。
研究に用いる試験機器およびその適用方法
本研究で用いる多機能ワイヤレスホルタ記録器CarPodRは、3軸加速度、心電図計測、体表面温度など多彩な生体情報の長期間の収集が可能な医療機器である。心電図解析だけでなく、心拍変動解析からの自律神経機能解析も可能である。心電図トランスミッタ(送信機)とデータを記録する本体(受信機)に 分けられており、コンパクトな本体と軽さ(18g)は大人のみならず小児への負担も少ない。専用電極を胸部に貼り付けるだけでコードは一切使用していない。CarPodR本体は入浴時に脱着するが、電極は貼付のまま入浴可能である。
併用薬・併用療法についての規定
該当しない(併用の有無に規定なし)
評価項目、評価方法
①身体活動データ
基礎代謝量、身体活動量、総活動量、3METs以上の合計時間、歩行時平均METs、合計歩数、合計活動距離、脂肪燃焼量、姿勢別割合、立位活動時割合、歩行時姿勢、METs割合、活動時重心分布、歩行時重心分布
②心電データ
上室性・心室性不整脈数、不整脈及び不整脈連発頻度ヒストグラム、RR間隔、STトレンド、波形種類、不整脈発生時の運動・姿勢種別・体表面温度変化
③自律神経活動(心拍変動HRV)データ
推移・日内変動、瞬時HR、体表面温度グラフ、HRV指標(VLF、LF、HF、LF/HF)、R-Rヒストグラム、N-Nヒストグラム
④睡眠時データ
睡眠時の重心移動奇跡、睡眠時体位、睡眠時・起床後2時間の自律神経活動変化
観察の方法
匿名化されたデータはクラウドへの転送を可能としているため、従来の受診頻度でも問題ない(本研究に参加のため、敢えて受診頻度を増す必要性はない)。 対象者には、測定期間における行動日誌(別途用意)をつけてもらう。
実施する検査
外来診察時(CarPodR装着前)に以下の患者情報(①②)の取得と理学療法士による運動機能評価(③~⑥)を行う。
①身長(m)
②体重(kg)
③起立時間(秒)
④10m歩行時間(秒)
⑤下肢の運動機能評価(NSAA:North Star Ambulatory Assessment)(点)
⑥6分間歩行距離(m)
症例登録、割付の方法
症例登録は研究対象者の疾患名、性別、年齢の情報を匿名化して収集する。各研究機関では対応表を作成する。割付は行わない。
統計解析の方法
同意取得により研究機関から提出され、匿名化されたデータを解析対象とする。本機器の利用において別途解析ソフトが用意されており、各データについてのレポートが作成される。Rawデータもしくは解析レポートのデータを用いて、適切な統計解析を実施する。以下の正常対象との比較(A)および理学療法士による臨床評価指標との比較(B)を行う。なお、統計解析を行う場合には生物統計専門家の指導を受ける。
A)正常対象(MEDILINKより匿名化及び提供されたデータ)との比較検討
患者から取得した3軸加速度データ、心電データ、身体表面温度の全データ【7)の③~⑥】について、MEDILINKより提供される年齢・性別をマッチさせた匿名化データとの比較検討を行う。
B)理学療法士による各患者の運動機能評価項目との比較検討
①10m歩行時間(秒)と歩行時平均METs、合計歩数、合計活動距離、歩行時姿勢との関連
②立ち上がり時間(秒)と歩行時平均METs、合計歩数、合計活動距離、歩行時姿勢との関連
③NSAA(総点数)と身体活動量、総活動量、3METs以上の合計時間、歩行時平均METs、合計歩数、合計活動距離、姿勢別割合、立位活動時割合、歩行時姿勢、活動時重心分布、歩行時重心分布との関連
④6分間歩行距離(m)と身体活動量、総活動量、3METs以上の合計時間、歩行時平均METs、合計歩数、合計活動距離、心電データ各種との関連
以上について統計解析を行う。なお、本研究は探索的研究であるため、上記の解析に限定されないものとする。
5 研究対象者の選定方針
選択基準
1)DMDまたはBMDと診断された患者(遺伝子診断の有無は問わない)
2)歩行可能(6分間歩行で350m以上)な患者
3)心不全および呼吸不全(含む人工呼吸器を非装着)を発症していない患者
4)研究実施機関に定期的に通院が可能な患者
5)本研究に同意取得ができた患者、あるいは同意能力がない場合には代諾者の同意が得られた患者
6)患者の年齢の範囲については問わない
除外基準
1)筋疾患と診断されない患者
2)歩行不能(6分間歩行で350m未満)である場合
3)心不全および呼吸不全を併発している患者
4)研究実施機関に定期的に通院が困難な患者
5)本研究に同意取得されない患者
6 研究の科学的合理性の根拠
筋疾患患者の身体活動量については3軸加速度活動量計を用いた検討により、自然暦・治療効果の評価に有用であることが報告(Kimura S, et al. Pediatr Int 2014; 56: 748-52.; Nishizawa H, et al. J Phys Ther Sci 2016; 28: 3249-51.)されており、現在幾つかの臨床研究も進められている。また、筋疾患患者で様々な心電図異常を示すが、特に不整脈は突発的に出現することがあるため24時間ホルタ心電計が用いられている。しかし、測定時間が短く不整脈の検出に限界があるためにより長期間の測定が求められる。また、心拍変動解析による自律神経機能の異常も指摘(Yotsukura M, et al. Am J Cardiol 1995; 76: 947-51.; Inoue M, et al. Peditar Int 2009; 51: 33-40.; Gamet A, et al. Ann Noninvasive Electrocardiol 2019; 24: e12587.)されているが、筋疾患患者における身体活動と心電データ・自律神経機能が同時に測定されていないため両者の関連については不明な点が多い。本研究では日常生活動作における様々な生体情報を同時に非侵襲的かつ長期的に検討するこが可能と考えられ、課題に対する研究の科学的合理性があると考えられる。
7 倫理指針第 12 の規定「インフォームド・コンセントを受ける手続等」(インフォームド・コンセントを受ける場合には、同規定による説明及び同意に関する事項を含む。)の概要。
※文書によりインフォームド・コンセントを受ける場合は、必ず当該文書を添付のこと。
※オプトアウトを行う場合は、オプトアウト文書を添付のこと。
研究期間内で研究協力機関(病院)に通院されている研究対象者または代諾者(両親または祖父母)に対して文書を用いて説明(説明文書、同意文書、小・中学生用アセント文書)を行い、同意を文書で得られた研究対象者のデータを使用する。
8 個人情報等の取扱い(匿名化する場合にはその方法を含む。)
研究に携わるものは、個人情報の取扱いに関して「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」、「個人情報の保護に関する法律」、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」等の適用される法令、条例等を遵守する。
各実施医療機関外に情報を適用する場合、研究対象者個人を識別できる情報(研究対象者名、住所、電話番号、カルテ番号など)は記載せず、匿名化されているもの(どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたものに限る)として研究対象者識別コードを記載する。必要な場合に個人を識別できるように、個人を識別できる情報と研究対象者識別コードは対応表を作成する。対応表は実施医療機関の個人情報管理者が管理を行う(個人情報管理者:武井洋一副院長)。対応表は、紙に記載し、鍵の掛るキャビネットに保管する。本研究結果が公表される場合にも、研究対象者個人を特定できる情報を含まないこととする。また、本研究の目的以外に、本研究で得られた個人情報を利用しないものとする。
個人情報の流出のリスクを最小化するために、以下の制限を設ける。
・カルテ番号を記載した文書を院外へ送付してはならない。
・カルテ番号を含む個人情報を電子メール等に記載して送信してはならない。
情報の提供に関する記録の作成・保管する方法について
提供の申請については、それぞれの機関で対応する。既存情報については、各機関で「匿名化されているもの(どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたものに限る)」に加工の上、紙媒体で作成し研究代表者に提供する。研究計画書には提供先の研究機関の名称、研究責任者の氏名、提供元の期間の名称、提供元の期間に研究責任者の氏名、情報の項目およびその取得の経緯を記載し、研究終了後5年間保管、提供先で保管する。各々の提供元施設では提供先の研究機関の名称、研究責任者の氏名、資料・情報の項目が記載された、情報提供の申請書を作成し、同意文書とともに研究終了後3年間保管する。
9 研究対象者に生じる負担並びに予測されるリスク及び利益、これらの総合的評価並びに当該負担及びリスクを最小化する対策
情報の管理次第では研究対象者に社会的不利益が生じる可能性があるため、適正な匿名化、個人情報の厳格な管理によりリスクの最小化に努める。
電極の貼付箇所にかゆみや皮膚炎を生じる可能性があるため、皮膚症状が 出現した場合には即時中止する。
10 試料・情報(研究に用いられる情報に係る資料を含む。)の保管及び廃棄の方法
個人情報の記録は各施設内で匿名化された後、回答済の調査用紙は鍵のかかるロッカーに保管する。記録の保管は提供元計画書と同意書(提供後3年間)、提供先計画書(研究終了後5年間)とする。研究終了後、ただちにシュレッダーで裁断し破棄する。その他の媒体に関しては適切な方法で破棄する。
11 研究機関の長への報告内容及び方法
結果の最終の公表後に、実施医療機関の院長にその旨を報告する。
12 研究の資金源等、研究機関の研究に係る利益相反及び個人の収益等、研究者等の研究に係る利益相反に関する状況
研究の資金源:武田薬品工業株式会社より研究資金の提供を受ける。研究者個人の収益等はない。
13 研究に関する情報公開の方法
研究成果は当協会および研究実施機関のホームページ上に掲載する。
14 研究対象者等及びその関係者からの相談等への対応
研究対象者から相談等があった場合は研究責任者または研究参加施設の研究者が対応する。
15 代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合には、第 13 の規定による手続(第 12 及び第 13 の規定による代諾者等の選定方針並びに説明及び同意に関する事項を含む。)
患者が未成年者の場合、または成人であっても知的等の障害のため判断が難しい場合には、代諾者(家人)からの同意を得るものとする。
16 インフォームド・アセントを得る場合には、第 13 の規定による手続(説明に関する事項を含む。)
研究対象の年齢に応じて小学生用と中学生用のアセント(別添の説明書)を用意する。特に小児では病名が告知されていない場合もあるため、研究対象者の理解度に応じて可能な限りアセントを得る。
17 第 12 の5の規定による研究を実施しようとする場合(同意を受ける時点で特定されなかった研究への試料・情報の利用の手続)には、同規定に掲げる要件の全てを満たしていることについて判断する方法
該当しない。
18 研究対象者等に経済的負担又は謝礼がある場合には、その旨及びその内容
該当しない。
19 侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究の場合には、重篤な有害事象が発生した際の対応
電極の貼付箇所にかゆみや皮膚炎を生じる可能性があるため、皮膚症状が 出現した場合には即時中止する。
20 侵襲を伴う研究の場合には、当該研究によって生じた健康被害に対する補償の有無及びその内容
この研究に参加することで、健康被害等の有害事象が生じる可能性は低いと考えているが、19で記載したように電極の貼付部位にかゆみや皮膚炎が出現した場合の治療費については健康保険内で対応し、研究に伴う特別な補償は行わない。
21 通常の診療を超える医療行為を伴う研究の場合には、研究対象者への研究実施後における医療の提供に関する対応
該当しない。
22 研究の実施に伴い、研究対象者の健康、子孫に受け継がれ得る遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られる可能性がある場合には、研究対象者に係る研究結果(偶発的所見を含む。)の取扱い
該当しない。
23 研究に関する業務の一部を委託する場合には、当該業務内容及び委託先の監督方法
業務委託は行わない。
24 研究対象者から取得された試料・情報について、研究対象者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性がある場合には、その旨と同意を受ける時点において想定される内容
本研究から、本疾患に対する予防、治療法の開発に寄与する成果が得られる可能性がある。そこで、研究協力者の機関に対して個人情報を除いた形で情報を提供する可能性があることから、同意取得時に説明・同意を得るものとする。
本研究で収集されたデータを二次利用して研究を計画する場合には、新たな研究計画書を作成し、倫理審査委員会で審査および承認を得た後に実施する。その際には公告を行い、協力拒否の機会を担保する。公告は日本筋ジストロフィー協会のHPを通じて公開する。
25 知的財産権の帰属
この研究の成果により特許権等の知的財産権が生じる可能性があるが、その権利は研究代表者および共同担当者全員に帰属する。
26 第 20 の規定によるモニタリング及び監査を実施する場合には、その実施体制及び実施手順
モニタリング及び監査は実施しない。
27 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の場合、遺伝子情報の開示に関する考え方
該当しない。
28 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の場合、遺伝子情報の安全管理の方法
該当しない。
29 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の場合、遺伝カウンセリングの必要性およびその体制について
該当しない。
(以上)
(以上、ホームページ運用チーム)