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令和3年度予算要望を厚労省へ提出

  • JMDA

筋ジス協会は、下にある「令和3年度厚生労働省予算編成に関する要望書」を厚生労働省へ提出しました。

令和2年6月22日

令和3年度 厚生労働省予算編成に関する要望書

一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会

代表理事 貝谷 久宣

 

新型コロナウイルス感染症による要望

 2019年12月に中国原発生した新型コロナウイルス感染症は瞬く間に全世界に広がりました。日本も例外でなく、2020年2月27日には全学校の休校が政府より指示され、医療職以外は自宅待機又はリモートワークによる自粛が求められました。4月7日には7都府県に緊急事態宣言が発せられ、16日には全国に拡大されました。5月25日に緊急事態宣言が1か月半ぶりに全国で解除されました。重度の障害児者は生活を変えるのが難しく、病院や施設では面会が出来なくなり、学校が休校になった学齢児は放課後等デイサービスや学童保育が時間を延長して対応しました。在宅の重度障害者は訪問介護や訪問看護の事業所の支援を受けていましたが、いつ感染者が出て支援が止まるかもしれないと大きな不安の中で生活をしていました。

 一方、健常な子供たちのいる家庭でも、母親が医療職の場合、父親が子供たちの面倒を見ながらテレワークを行っています。もし、母親が濃厚接触者の近くで仕事をしていれば、検査を受けて陽性と判明するまで子どもたちから隔離して生活を送らなければなりません。父親は子どもたちを公園で遊ばせ、食事を作り、昼寝をさせている間にテレワークで会議や仕事をこなす。この様な生活が日本中で行われていると思います。

 緊急事態宣言を受け三密を避ける自粛した生活が、いかに大変で苦しく、ストレスが溜まる生活であることを多くの人たちが実感したと思います。筋ジストロフィー患者は、この様な自粛した生活を何十年も病院や施設の中で送っている事実を再認識してもらい、入所者のQOLを改善してください。

 

1.入所者(入所希望者)のQOL向上
(1)入所者のQOL実態把握
客観的な指標を用い、正しく入所者の声を集める実態調査の実施をお願いいたします。
(2)通信ネットワークの設定
 ネットワーク設定のための人員を増やしてください。外部とつながる唯一のネットワークは患者の生きがいになっています。現在、家族との面会も難しくなっています。

2.災害時の対応
(1)人工呼吸器利用者の生命保護
停電時に人工呼吸器利用者の生命を保護するため、関係機関を包括した連絡網および連絡体制の整備をお願いします。
(2)療養介護病棟のある病院における備蓄重油の積み増し
自家発電装置稼働のための備蓄重油をこれまで以上に増やしていただくようにお願いいたします。

3.患者・家族のQOL向上
(1)障害者総合支援法等の適正な実施
 ①介護保険との適切な連携
 利用者が65歳を超える際の不利益な変更をなくしていただくよう、お願いいたします。
 ②地域格差の是正(福祉サービス)
 重度訪問介護が就労に使える様にしてください。働く権利は憲法にも障害者権利条約にも明記してあります。また、大学等の就学支援については地方自治体の予算不足による却下例が複数報告されています。是正をお願いいたします。
 ③重度訪問介護、居宅介護支援、移動支援の適用拡大
 就学、就労、入院中でも在宅時同様の支援を受けられるよう、適用拡大をお願いします。

(2)在宅介護への支援
 ①福祉人材の確保
 障害者福祉を担う事業所の人材不足は極めて深刻で、認められた支援量を利用できないことが多くあります。福祉人材の育成、人材確保のためのあらゆる手段を講じていただくよう、お願いいたします。また、介護人材の特定医療行為の安全確保についても施策の検討をお願いいたします。
 ②家族介護支援
 家族を有償ヘルパーとして雇用することを可能にしていただく等、家族介護への支援制度の創設をお願いいたします。
(3)就労対策の充実
 ①通勤者への支援
 必要な機器の購入、事業所内のバリアフリー化、障害者トイレ設置等への補助制度創設をご検討いただきたくお願いします。
 ②在宅就労者への支援
 症状が進行し、通勤が困難となった後も就労を通じて社会参加できるよう、就労技能習得や、ICT機器の購入等への支援をお願いします。

4.治療・研究開発の促進
(1) 治験と研究費の予算増額、支援強化
 ①負担の少ない患者評価システムの開発
 現在治験の評価システムは、発現率をみるための筋生検や、6分間で歩ける距離の変化を観察する検査を行っています。これらは患者にとって苦痛を伴うものです。ウエアラブルで24時間、心電図や歩行距離を始めとする筋ジストロフィーに関係する10以上の生理指標システムの研究を進めてください。これにより、治験実施場所に通わなくても、自宅等の任意の場所で治験に必要なデータを得ることができます。
 ②民間企業への支援
 採算が重要視される民間企業が希少疾患の創薬に取り組めるよう、希少疾患の創薬支援制度のさらなる充実をお願いします。
(2)研究機関の充実、強化
 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所をはじめとする研究機関の充実・強化をお願いいたします。
(3)遺伝子検査の保険適応
 ①顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
 海外で臨床試験が開始されている顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー確定診断のための検査については早期の保険適用をお願いします。
 ②全塩基解読(シークエンス法)
 筋ジストロフィーの遺伝子変異箇所は多岐にわたり、確定診断のために全塩基解読(シークエンス法)が必要な患者も多くいます。これについても保険適用をお願いします。

以上