スクールバスの事案で文科省担当課と意見交換
5月17日に発生したスクールバス通学中の特別支援学校生徒の死亡事例を受け、文部科学省の初等中等教育局特別支援課の皆様にお時間をいただきました。平成31年の「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議(最終まとめ)」を含む現在のお取り組み状況をお伺いし、率直な意見交換とお願いを行ってまいりました。
1.児童・生徒の安全を高めるために
(1)対応マニュアルの点検、整備
点検、整備の際に、「学校職員だけでなくバス乗務員も『何かあったら迷わず119番』が基本」を明記していただくようにお願いしました。また、安全のマニュアル策定の場(会議等)に、学校関係者だけでなく医療者を入れることで、より児童・生徒の実態に合った対応にする取り組みについても強化をお願いしています。
(2)対応訓練
多くは学校内での対応訓練は定期的に行われていると思われるが、通学中等校外のことが訓練の対象になっているかどうかは把握していなく、先日、事務連絡で救急車の要請など危機管理の対応を個別マニュアルに盛り込んだとのお話を受け、バス運行会社の皆様も巻き込んで訓練を行っていただくようにお願いしました。
(3)バス運行会社乗務員へのお伝え
マニュアル整備、訓練を行っていただいても、日により乗務員が異なるということもあるため、バス運行時の乗務員が持つ資料に、対応マニュアルや児童・生徒の直近の体調を伝える資料を加える等、安全のための情報を共有する取り組みについて、ご検討をお願いしました。
(4)空振りを責めない風土づくり
学校・保護者が一体となり、「119番通報したが、結果的に、救急車を呼ぶほどのことではなかった」といった「空振り」を責めない文化、「無事でよかった」と考える文化を作っていくことが重要であることをお伝えし、お願いしました。
2.過剰な制限を受けないために
一律に「筋ジストロフィーの児童・生徒は危険」と判断され、スクールバスや福祉サービスの利用に制限を受けることがないよう、日本筋ジストロフィー協会から、病型ごとの差、個人差が大きい疾患群であることを発信し、一人ひとりの状況に合わせた対応をお願いしていきます。
3.今後に向けて
(1)スクールバスの安全をさらに高めるために
①医療者の同乗、専用バスの運行地域ごとに財源や人材確保の難しさがあることを踏まえつつも、東京都(医療ケア専用バス)や大阪市(福祉タクシーに看護師が同乗)といった、より安全な取り組みを少しでも広げていただくようにお願いしました。
②救命措置としての吸引
誰もがAEDを利用できるように、救急車到着までの救命措置としての吸引をできるように、法改正を含めた検討を求めていきます。
(2)医療的ケア利用者全体の制限を減らしていけるように
筋ジストロフィーは進行性の疾患であり、健康を守るために、症状に応じて段階的に医療的ケア(吸引・人工呼吸器・経管栄養等)を導入していきます。しかし、医療的ケアを利用開始すると制限が増える(スクールバスに乗れない、授業中保護者が校内待機、通所先が受け入れなくなる、等)ため、必要なケアの導入を躊躇う、遅らせるといった事例が多くあります。このような制限をできる限り減らしていけるように、お願いしました。
4.その他
地域生活支援事業の「移動支援」の通学への利用、高等教育における介護サービスの利用等、居住自治体の財務状況による格差があることも話題にあがりました。
初等中等教育局特別支援課のみなさま、お忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
4.その他
スクールバスの事案で文科省担当課と意見交換の写真右から
支援第一係長 上久保秀樹様、特別支援教育調査官 深草瑞世様、課長補佐 濱谷貢様、
JMDA副理事長矢澤健司、宮城支部副支部長中里俊晴、理事池上香織
(以上、ホームページ運用チーム)