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患者レジストリの薬事規制下での利活用に向けて ―クリニカルイノベーションネットワークの進展も踏まえて―

中村 治雅(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター 臨床研究支援室長)

昨今、リアルワールドデータという言葉をよく耳にするようになりました。リアルワールドデータとは、私たちが生活している中で出てくるさまざまな情報(リアルな世界の情報)のことで、例えばインターネットでの買い物のデータや、ヤフーなどでの検索データ、交通カードでの移動情報なども入ります。

その中でも、注目が高いのが私たちの医療情報のリアルワールドデータです。病院に通った際の診療情報、レセプトの情報、研究に参加した際の情報などもそうなります。

これまで、例えばお薬の開発などでは、治験と言われるとても厳密な条件での試験が重要とされてきましたが、筋ジストロフィーなど含めて例えばとても患者さんの少ない病気では、なかなか患者さんも集まりませんし、開発にはとても時間やお金がかかるものでした。

また、お薬が売り出されてからも、本当に安全で有効なのかを調べないといけませんが、その方法が限られていました。そこで、世界中でこの医療のリアルワールドデータを活用していこうという活動が進められるようになりました。

医療の分野でのリアルワールドデータの一つには、皆さんのご存知のRemudyなどの患者レジストリがあります。日本では、「クリニカルイノベーションネットワーク」という活動を国が進めています。

これは、一言でいうと、レジストリなどで患者さんの情報を集めて、患者さんへの倫理的な配慮を十分した上で、それを研究者やお薬の開発する会社などが利用できるようにすることで、新しい治療法の開発を進めたり、新しいお薬が世に出た後の安全性や本当に患者さんに役立っているかを調べたり(製造販売後調査と呼びます)することを進めようという活動です。これまでにRemudyが取り組んできたことをより進めていこうというものです。

ただ、このようなことを進めるためには、規制当局がその情報を評価する必要があることから、レジストリのシステムが十分であるのか、レジストリ情報の正確さや信頼性、必要となる情報(登録する項目)が十分であるか、個人情報などへの配慮がなされているのか、研究者や企業への提供のルールは透明性があるのかなど、これまでのRemudyでは対応できないことが出てくる可能性があります。

今まさに、クリニカルイノベーションネットワークに対応するために、Remudyも新しい時代への対応に向けた検討が開始されています。