筋ジス世界治験参加 日本、薬の承認遅れ解消へ 
筋ジス世界治験参加 日本、薬の承認遅れ解消へ
       産経新聞 2011年1月30日(日)7時57分配信
  筋肉が衰える遺伝性の難病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(筋ジス)の薬の効果を調べるため、英製薬企業グラクソ・スミスクライン(GSK)が世界で同時に行う治験に日本も参加することが29日、わかった。
患者の数が少ない神経性難病に対して世界同時進行の新薬治験が行われるのは日本初。海外で標準的に使用されながらも、日本で承認が遅れる「ドラッグラグ」の解消にもつながりそうだ。
同病は筋肉に必要なタンパク質を作るジストロフィンと名付けられた遺伝子の一部が異常のため、遺伝子の読み取りがうまくできずに筋肉が徐々に失われ、歩行困難になる病気。
新薬は人工的に作った核酸を投与することで、遺伝子異常部分に隣接する部分(エクソン)を読み飛ばして筋肉のタンパク質を生成させる。
オランダで2007年、同薬を歩行困難な4人の患者に投与したところ、成果があがったことが米医学誌に発表された。ベルギーを中心に12人の患者に行われた治験でも歩行の改善がみられ、副作用がみられなかったことが昨年10月、世界筋学会で報告された。
こうしたデータを踏まえ、GSKはフランス、ドイツ、米国など最大18カ国の5歳以上の180人の患者に1年間にわたって新薬を投与し、効果をみる世界治験を計画。
180人のうち3分の1には偽薬を与えて比較する。人種による効能の違いや投与量などを比較研究したうえで、各国で新薬の承認申請を行う予定。
日本では、厚生労働省研究班に筋ジス患者団体が協力して作った患者の遺伝子情報のデータベース(Remudy)がスタート。これまでに600人以上が登録しており、GSKの治験計画の立案に一役買っている。今回、全国の12人の患者が参加する。
筋ジストロフィーの実験モデルとなるビーグル犬を開発したことで知られる国立精神・神経医療研究センターの武田伸一部長は「筋ジスの新薬試験が日本で行われるのは約20年ぶり。
患者の遺伝子情報のデータベースが整ったことが世界治験につながっており、意義は大きい」と話している。
患者団体である社団法人「日本筋ジストロフィー協会」の貝谷久宣理事長は「一日も早く治療法を確立して今年が難病である筋ジストロフィーの治療元年になることが悲願」と話している。


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